Chicken heart
Chicken heart
『放課後、屋上。 住吉 流』
……え、ちょっ、待てよ!!ん、何か違う‥‥‥‥あの‥逃げてもいいですか?
住吉流ってあのスミヨシナガル?ど、同姓同名…だったりしたらいいなぁ。
心の声の筈なのに、声が裏変えるような感覚がかなりリアルだ。しかも、いつ入れたんだか分からないが、我が愛する軽音部の活動日だったため今現在の時間は当たり前だが、放課後に余裕で突入…いつものように、19時を回っている。・・ふふ‥や、やぁねぇ。きっと、私の下駄箱と誰か‥‥隣のとか‥と間違えたのよぉ…。うん、きっとそうに違いない。と心の底から叫びつつも、明日が来ないなんていう事態を起こさないよう、今私は凄まじい形相で廊下を走り抜け屋上へと向
かっていた。
ひぃ…!?あああ!居ませんように!いや、居なくちゃ更に殺される率が高くなる…!‥ああ、屋上にまだ居ますように‥!!
バン!という、けたたましい音を響かせ、倒れ込むように扉を開く。
「‥‥はぁ‥はぁ‥‥‥す、す‥みよしくっん‥‥?」
息がまだ十分に整っていないのと、今だ消えることのない恐怖心により声が詰まり声が掠れ、声に成らない声が小さく響いた。
返事が無い、屍のようだ。何て、この状況に不似合いな某RPGに登場の例のフレーズが浮かぶ。
‥くっ‥‥!素敵な脳内だと自分を褒め称え笑ってやりたいが、如何せん状況が状況だ‥‥寧ろ、乾いた笑みどころか微笑んだ顔を作れる自信すらない‥あああ‥!!!寧ろ、死んで逃げてしまいたい!
思考がグルグルと回る中、何とか顔を上げキョロキョロと相手を捜す。
‥‥‥‥い、いな「よぉ。」
イター!!!いや、寧ろキター!!
現実逃避したい脳内があの有名な2チャン特有の顔文字入りで叫ぶ。
あああぁ!!気のせいだと信じ込んでしまいたい!!
「ま、待たせてしまい。申し訳なく思っている次第です。」
冷や汗ダラダラ歯が噛み合わずガタガタ。嗚呼、最悪だ。噂を全て信じきっている訳では決してないが、怖い者は怖いし自ら危険に身を投じるような、勇者ではない。それどころか、チキンだ。
つまり、何が言いたいかというと、しつこいようだが逃げ出したい。
「あ?」
ひぃぃ!!ギロッて睨んだ!ギロッて…!!
「ごめ、なさい!!」
「付き合え。」「はいぃ!!!…・・い?
ど、ドコにダレがでございますか?」
睨まれた恐ろしさからか、間を置かずに返事をしてしまった自分を殴り飛ばしたくなるのは、きっと、そうきっと気のせいだと、希望的観測では無いのだと脳内で思考が暴れるように駆け巡る。
「お前と俺がだ。」
ちょ、いきなり何でそんな話になっちゃってるの!?しかも、威圧感が増しちゃってるよ〜。うぅ…本気で泣きそうだわ…。
「こ、恋人は、好きな者同士がなるものですよね?」
「当たり前だ。
はいか、いいえしか言うな。」
「はいぃ!!」
「よし。」
―はいって言ったー!!よしって言われたー!!
…今、途轍もなく顔が歪んでて青い自信がある!!
「帰るぞ。」
顔色悪く体を硬直させている千早を文字通り、引っ張って歩き出す。
「帰るって‥‥どっ、何処行くの?」
「お前んち送る。」
「‥‥‥私のうち知ってるの‥‥?」
清々しいくらいにキッパリと、発言する流に疑問符が浮かんだため、恐る恐るだが、言葉を紡ぐ。
「‥‥‥あぁ。」
穴が空きそうなくらいジッと見つめると、微かに耳が赤く染まるのをみとめた。
‥‥え、何、その反応‥。赤いの絶対移ってるよ!!いやぁ!何、この今まで体験したこと無い、ほんのり甘い空気!!
‥え、甘い?ま、まさか付き合えって言ったのって、ほ本気!?好き!?あの住吉流が私を!?
「え……な、何で…?」
あぁ!!口がよく回らない!す、ストーカーだなんて疑ってなんかイナイデスヨ。
「弟が…」
ごにょごにょと口が動くも、聞き取れず全く要領を得ない。
「お、弟が?」
何かを決心したように、顔を引き締め千早の瞳を映す。
「俺の弟がお前の弟と仲良くて、何回か迎えに行った事があんだよ!」
何処か切羽詰まったような声だ。
うぅん・・弟って事は、小学2年生だし、幼稚園時代から仲良かったら送り迎えとかしても、解らなくもないけど、見たことあったかな?高校に入るまで、住吉君の事私知らなかったよ?
無意識に首を傾げ、流の顔をジッと見つめる。
「‥・・・っ・・・。」
無意識の上目使いに何を思ったか解らないが、まるで何かに耐えるように下唇を噛み、顔を逸らした。
「あ、えっと、お願いします。」
そんな様子の流を了承しないからだと、判断し反射的に口を開き頭を下げる。
「‥ああ。」
微かに口元に笑みを浮かべ、手を引く。
‥て、手!?手繋いでる‥ギャッ、幼稚園以来だよ!ちょっ!この顔が赤くなってるのは、行為事態に照れてるだけであって、住吉君と手を繋いでる事実に照れてるわけじゃ決してないんだからね!‥ちょっと、幼稚園の時にリュー君と繋いだ時のを思い出したのもあるんだからね!リュー君が誰って言うツッコミもナシですからね!
誰に言うでもなく、俯き加減に繋いだ手を見ながら脳内で言い訳を紡ぐ。
「‥ぶっ‥百面相‥。」
わ、あ。笑った顔可愛い‥。
無人の教室から消し忘れたらしく、蛍光灯の灯りが差し込み、表情がよく見えた。途端に、今の今まで目の前の男にビクビクと怯えていたのが、少し可笑しな事に思えてきた。
「ふふ…。」
「んだよ?」
私が笑い出したのが、気に入らないのかさっきまで、睨みつけているとしか思えなかった表情が、拗ねているような表情に変わる。
不思議・・何で恐がってたんだろ?
「ん〜ん、何でもないよ!ちょっとだけ、住吉君の事が解って嬉しかったの!」
私はそう言って、今日流に対し初めして心からの笑顔を向けた。
えんど?