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「うぉっ!みっちゃん、みっちゃん!!
みっちゃぁ〜ん!!おっきしてくださ〜い。」
 シャッと勢いよくカーテンを空け、窓から外を見ると、途端に目を輝かせ先程まで入っていたベッドに駆け寄り、“みっちゃん”と呼んだ、男性を揺り動かす。
「――ウザイ。」
 機嫌の悪そうな小さく低い声が聞こえる。
「ね、ね!ホワイティング クリスマスだよ!」
 女は構わず、朝からハイテンションを保つ。
「ホワイティング クリスマス何て言葉は、ぬぇー!!」
 目覚めのツッコミが顎を抉るようなアッパーとともに決まる。
「しどい゛。彼女様に向かってアッパーだなんて!」
 痛みに歪んだぐちゃぐちゃの顔を向けてくる。
「あ゛?
ちゃんと手加減してやったろーが。」
 舌打ちをしながら、ベッドから出て、袢纏(はんてん)を纏う。
「で、わざわざいつもならまだ寝てる時間に起こした言い訳を聞こうか?」
 青筋を浮かべ、拳を作り、くだらねぇ理由だったら、お前を殺すと言わんばかりのオーラを放つ。
「…あ、う‥。雪が‥――」
「雪が?」
「…積もってたから、しみ渡りしたいなぁ。何て…。」
「思ったわけだな?」
 呆れたような声色で拳骨一発。
「いっ、だぁっ!」
 のた打ちまわる女を眺め、袢纏をコートに変えマフラー、耳当て、手袋を装着し、完全武装になる。
「――置いてくぞ。」
 暴力的ではあるが、存外彼女に甘い顔しかできない男は、そう言って笑う。
「あ、待って〜。」
 慌てて、自分自信も完全武装をしようとバタバタと騒がしく準備をする。
 そんな女を横目に、男は玄関へ向かう。
「先、出てるから早く来いよ。」
「え、まっ!
あと帽子だけなのに!見つからないのに!」
 廊下に響く声に小さく笑い、リビングのサンタ人形に被せてある帽子を思い出す。お決まりの白いボンボンのついた、赤いサンタ帽子と違い、可愛らしいパステルカラーの明るい色の帽子が、何ともミスマッチで笑えた。
「ハァ。」
 白い靄。吐く度、息が白い空気になる。
 嫌いじゃないけど、この凍てつくような寒さは、偶にでいいと思う。
「み、ちゃんっ!!」
 何とか帽子を見つけたらしい女が玄関から飛び出して来た。
「おまっ!長靴は!?」
「え、あ、忘れてた!……マイブーツで頑張る!」
「頑張るとかじゃねぇ。戻るぞ。」
 無理矢理手を引き、再び家に入り母親の多少薄汚れた長靴を指さす。
「も〜、みっちゃんは過保護何だからぁ〜。」
「お前なぞ、誰が保護するか!」
 一発頭を叩(はた)く。
「うぅ。これ以上馬鹿になったらみっちゃんのせいだからね〜。」
 ブツブツと文句を垂れつつ、ブーツから長靴に履き変え、再び外へ向かう。
「ね、ね。早くしないと溶けてズボズボ埋まっちゃうよ!」
 先程のやりとりなど、すっかり忘れたように男の手を引っ張り、雪山の上へ促す。
 仕方無いとばかりに、溜息を一つ吐くと上に登り、雪に覆われた田圃を眺める。
「ね、ね!早く早く!手、貸してよみっちゃん!」
 多少、朝日に照らされキラキラ輝く雪に感動を覚えたもののぶち壊された。
 確かに、ここにずっと住んでいる俺からしてみれば、見慣れたものと言えなくはないが、こうもあっさり他人にぶち壊されるのも嫌なものだ。
 思考は、ぐるぐる回るが反射的に手を伸ばしていたらしく、体重がかかった。態度に出さぬよう、内心焦りつつ慌てて引っ張る。
「わ、あっ!」
 勢い余って雪の上に突っ伏した女を慌てて起こす。
「あー、ごめん風雪。」
「もう!私はとてつもなく寛大な心の持ち主ですから、許して差し上ます!」
 笑ってそう言い笑いかける。そして、次の瞬間にはキャーキャー騒ぎだす。
「綺麗綺麗!小学生以来だねみっちゃん!」
 その言葉にさっきのぶち壊されたのが、見事に帳消しにされたのがわかり苦笑を漏らす。
「だから、俺はお前に敵わないんだよな。」
 吐露した言葉が聞こえなかったらしく、首を傾げる風雪。
「何か言った?みっちゃん。」
「いんや、何でもねぇよ。」


 きっと僕らは変わらずに