彼らの夏
昨日は、今年一番の暑さだったらしい。
それでも今日は昨日より暑く感じる。
今夜のニュースは「今年一番の暑さ」とまた言うのだろう。
少年はなるべく日陰を歩いていた。
隣を歩く友人と同じ学校のプールバックを持ち、会話をせずにひたすら道を歩く。
せっかくの夏休みにわざわざ学校に行って、プールに入って帰る。
プールに入っている間は涼しくて良いが、帰り道が地獄のような暑さだ。
「暑いな」
「暑いね」
六年間のつきあいである友人は、唸るように言う。
少年も唸るように答えた。
生温い風が二人の間を通り過ぎる。
「あ゛……宿題やった?」
「一応ね。あとは日記だけだよ」
「オレさぁ、算数のドリルが半分残ってるんだよなぁ……」
友人がすがるように少年を見る。
長い付き合いから少年はすぐに視線の意味が判ったか、暑さのあまり返事をするのがめんどくさかった。
「ドリル見せてくれる優しい友達はいないかな?」
黙っている少年の横で友人は言葉を続ける。
ちらちらと此方を見る友人に対して、笑いがこみ上げてしまった。
「今日、暑いね」
「あ? そうだな」
少年の見当違いな返事に友人が不思議そうな顔をする。
ちょうど傍の木に蝉が止まったのか、耳障りな鳴き声が大音量で聞こえた。
立ち止まった少年を、何かと思い一緒に立ち止まる友人。
少年は汗を流しながらニヤリと笑った。
「こんな日にアイスを奢ってくれる友達がいたらなぁ〜」
「……」
「涼しい店で冷たい物を食べながら宿題したらサイコーだよね」
「……わかった。 オレが奢ればいいんだろ?」
諦め顔で友人が言うが否や、少年は走り出す。
後ろを見ながら蝉より大きな声で言った。
「じゃあ荷物置いたら、すぐに猫食堂前に集合っ!!」
「ちょ、ちょっと待てよ!
猫食堂ったらアイスが500円じゃねェか!!」
「うん、お前の奢りだからね〜」
「ちくしょ〜!!」
二人は口喧嘩しながら走って家に帰る。
青い空に白い入道雲。
今年の夏休みもあと半分。
【毎日をどうやって楽しく過ごすか】
それが今の二人に与えられた重要な任務といえよう。
涼しい季節は、まだ少し先の話。
〜END〜