真夏日ときどき虹





私は地球を哀れむ。こんなに体温が上がって、さぞ苦しかろう。
ヤケドしそうなくらいのアスファルトを撫でてみても何も伝わらない。
この下の土は死んでしまっているだろう。
私は地球の気持ちになってみようと、炎天下の中真っ黒なスウェットを着て外で立ってみた。
二時間で気絶した。


「はれ?裕くん。なにやっとん。」
「しぃちゃん倒れたぁゆうてばぁちゃんがとんで来たんよ。びっくりしたで、ホンマ。こん真夏にスウェット着とるしさ。顔真っ赤じゃし。」

向かいに住む幼馴染の裕次郎は、渋い名前のくせに外国の血が混ざっていて、パッと見イギリス人だ。
イギリス人が方言をしゃべっている。今の時代じゃ何にも珍しくない。
ケント・デリカットだって流暢だ。

「今日はなにやってたん?」
「地球の気持ちになってたんよ。暑くて重たいアスファルト着とったらさぞ暑かろうなとおもって。」
「今日はぶち暑いけぇな。真夏日じゃ言うとったよ。…地球も苦しかろうの。」

しぃちゃんは優しいのぅ。裕次郎は私に膝枕をしてうちわを扇ぎながら笑う。
色の白い肌を涼しげに思って、同時に体感的にもかなり涼しいことに気がつく。
キャミソールとショートパンツ姿だった。

「裕くんか。」
「ま、ま、まさか!おばちゃんらに決まっとろうが!…しぃちゃん、わしらもう高校生じゃで。」
「なぁに恥かしがっとるんじゃ。ウチとあんたはパンツ一丁で水浴びした仲じゃろうが。」

膝枕の上で頭をウガウガ動かして反論すると、ガックリと項垂れた裕次郎の顔が近い。

「裕くん、相変わらず綺麗な顔しとるよの、うらやましいわ。」

長い睫がパチパチ動いてそっと近づいた。
何じゃ、裕くんウチのこと好きなんか。
受け入れる準備は万端だったのに、

「静香!裕君にちゃんとお礼言っときんさいや!」
「お、お、おばちゃん」
「はいはい。わかっとるわ。ホンマ、KYってのは母さんのことじゃな。」
「KY?」
「最近都会の子らが使っとる流行言葉じゃってさ。『空気読めない』の略なんじゃって。」
「そうなんじゃ、…え?」

裕次郎がキョトンとする。

「裕くん、ウチらもう高校生じゃで。」
「う、うん。」
「そのヘタレで押しの弱いとこ直さんと、ウチは人の物になってまうけぇね。」

私は飛び出すように外へ出て、庭のホースをつかみ、地球の温度を下げる為に水をまく。
後ろから追いかけてきた裕次郎が切羽詰ったように抱きしめるので、私の体温は上昇を続けている。

「温暖化じゃ。」

太陽が笑って虹が出た。


〜END〜